イーサリアムはその特殊性ゆえ、他の仮想通貨とは分けて考えるべきと言えます。『イーサリアムプロジェクト』や『THE DAO事件』に触れながら、『イーサリアム』のチャートの動きを見ていきましょう。
【目次】
- イーサリアムのチャート値動き
- 直近の値動き要因『メトロポリス』
- そもそもイーサリアムとは
- イーサリアム史上最大の事件『The DAO事件』について
1年で数十倍の価格となる『イーサリアム』
2016年8月には1ETH約1000円でした。この二か月前には『セキュリティの脆弱性』を突いたハッキング事件『The DAO事件』が起きており、価格は下落しています。その後、『セキュリティの脆弱性』を克服する方法として『ハードフォーク』が行われました。しかし、価格は盛り上がりを見せることなく、2017年1月頃には約900円となります。その後、3月中旬頃から急に大きく上昇し、その後8月23日には33000円と『約33倍』もの価値にまでなりました。
この3月中旬からのイーサリアムの急激な値上がりは、数ある『アルトコイン』の中で『先駆け』とも言える価格上昇であり、その他のアルトコインも後を追うかのように、その後大きく価格を上昇させていきました。そのため、『イーサリアム』だけでなくその他の通貨も似たような価値の上昇が見られるので、3月~5月のこの高騰は『仮想通貨』全体が価格上昇していた結果とも言えます。
『イーサリアム』の価格推移としては、『ビットコイン』のように『じわじわと上げてくる』わけではないようです。短期はもちろん長期のチャートで見ても、複数回の突然の高騰によって、現在の価格帯にまで来ています。突然の『高騰』でも『急落』しない強さが『イーサリアム』にはあり、壮大な『イーサリアムプロジェクト』に支えられた堅牢な需要が見て取れます。
そのため、よっぽどの高値圏出ない限り、一度『価格帯』が変わると、そのままその『価格帯』に居座ると思って売買をしたほうがよさそうです。
突然の高騰
2017年5月20日ごろから、大きく価格が伸びだします。それまで、1ETHが約1万円だったにも関わらず、2日で倍になるなどの急騰があり、その変動幅には誰もが驚きました。
この値上がりに関して、重要なインベントも特に発表されておらず、価格の高騰に対しての主な原因ははっきりしていません。恐らく最も可能性の高い要因としては、国際的なイーサリアムに関する集まりである『イーサリアムアライアンス』の会議メンバーに、日本の大手企業『トヨタ自動車』や韓国の大手企業の『サムスン』などを含む『約86社』が参加することを5月22日に発表したためだと思われています。この情報が関係者から漏れ、徐々に広まり、突然の高騰に繋がったという説が現在は最も有力です。
今後のイーサリアムのチャート予測
2017年8月24日現在は『約3万5千円前後』を推移しており、8月22日の高騰以降は安定した値動きになっています。このまま、9月のアップデートまでこの価格帯を維持する可能性が高く、9月に入ってから徐々に動くものと思われます。そのため、9月からの『イーサリアム』は、アップデートまでは小さく素早い乱高下を見せると考えられます。そして、アップデートがTwitterなどでカウントダウンされだすと、大きな値動きが期待できます。売買を行うのであれば、このタイミングを逃さないようにようにしましょう。
また、同時に『イーサリアムクラシック』の値動きにも注意するべきです。アップデートの影響をなにかしら受ける可能性もあります。
おそらく、9月以降の価格帯から年内は動くことはなく、9月が今年最後の大きな値動きになる可能性が高いです。そのため、4万3千円ほどが今年の『イーサリアム』の高値となるでしょう。また、価格も4万前後で落ち着くと思われます。
【直近の価格高騰要因】イーサリアムのアップデート『メトロポリス』
これまでのイーサリアムの高騰の理由は、『好材料』が多く出ていることと考えられています。そのため、逆に好材料の出尽くしも噂されており、現在は価格が上がりすぎているため、ちかじか大きく下げるとも言われています。その他の『通貨』として流通することしか『目的』がない『仮想通貨』と違い、『イーサリアム』にはちゃんとしたプロジェクト自体の目的があるため、少し他の『仮想通貨』とは異なると言えます。そのため、予測できない動きをよくするのも『イーサリアム』が最も多く、次回のアップデート『メトロポリス』の具体的な日時が公表された8月22日も、突然大きく価格が上昇しました。変動率にして約10%ですが、市場の予測に大きく反した高騰となりました。
というのも、以前から2017年の夏にはアップデート自体を行う予定は公表されており、市場も既に織り込み済みの価格を推移していると専門家全員が思っていました。ところが、8月22日に価格が実際には急上昇し、市場は大いに盛り上がる結果となります。このアップデートの日時は9月下旬となったため、再度『イーサリアム』に大きな値動きがあるとすれば、その付近だと思われます。
そもそもイーサリアムとは
『イーサリアム』誕生の背景として、『イーサリアムプロジェクト』という『計画・組織』が存在します。その計画の実現のために必要な技術・道具として生み出されたアプリケーションやソフトウェアなどのプラットフォームの総称が、我々が普段『イーサリアム』と呼んでいるものの正体になります。
そのため、多くの方が『イーサリアム』を『仮想通貨の名称』だと誤解してしまっていますが、実は『イーサリアム』という名称は正式なものではないと言えます。我々が『イーサリアム』と呼ぶ仮想通貨の正式な名称は、実は『ETH(イーサ)』となっています。
そして、肝心の『イーサリアムプロジェクト』の目的ですが、『ETH』という『仮想通貨』や『その他のもの』を用いることで、『スマートコントラクト』という『ITの新契約システム』などを実現し、よりよい『便利な社会を実現させる』というものになっています。この『スマートコントラクト』は契約の条件確認や『履行』までを『自動的に強制』させられるシステムと言われており、世界中が注目している『ITの新技術』となっています。
そのため、『イーサリアム』は仮想通貨の世界では『バージョン2.0』にあたるものとされ、仮想通貨のその先にある『スマートコントラクト』という目的の実現のために存在してると言えます。そのため、『ビットコイン』が仮想通貨の始まりであり、『バージョン1.0』と世間的には呼ばれるのに対し、『イーサリアム』は『バージョン2.0』と呼ばれ、過去に存在した仮想通貨とは一線を画す存在となっているようです。そのため、どちらかというと企業や技術者・投資家から絶大な支持を集めている通貨と言えます。
The DAO事件とは
イーサリアムの価格相場を語るうえで、『THE DAO事件』は避けては通れません。
イーサリアムの歴史上、最大の事件であり、短期で最も相場が動いた時期とも言えます。
THE DAOとは
『The DAO事件』とは、貨幣であるイーサリアムの『セキュリティの脆弱性』をついたハッキング事件のようなものと思われていますが、実はそうではありません。
というのも、『イーサリアム』よりも上位の概念に『DAO』というものがあります。『DAO』 とは 『Decentralized Autonomous Organization』 の略です。日本語では『自律分散型組織』と訳され、要は『特定の国や特定の管理主体に属さない組織』であり、『完全な独立組織』という意味になります。
『DAO』はこの『完全独立組織』の実現を目指す構想であり、それを実現するシステムと言えます。そして、その『DAO』の実現を支える一つのツールが『通貨』としての『イーサリアム』になります。
『Bitcoin』やその他多くの『仮想通貨』が、ブロックチェーン技術を使うことによって『特定の国』や『特定の管理主体』に属さない『貨幣』を実現しました。
同じように、『DAO』はブロックチェーン技術を使って、『自律分散した完全独立組織』の実現を目指しているわけです。
そんな『自律分散した完全独立組織(DAO)』と『イーサリアム』以外にも、様々な動きが同時並行で行われています。『スマートコントラクト』という最新のIT技術を用いた新たな『契約システム』もそのそ一環です。そして、これら一連の動きが『イーサリアムプロジェクト』と呼ばれるものになります。
THE DAO事件とは
このように、『イーサリアム・プロジェクト』の一環である『The DAO』ですが、2016年6月にハッキングで約50億円相当の資産(イーサリアム)が奪われてしまいました。つまり、『イーサリアム』が直接攻撃されたわけでなく、その上位のシステムである『DAO』が攻撃された結果、『大量のイーサリアム』が盗まれたということです。それが、『THE DAO事件』と呼ばれる事件の内容になっています。
そして結果として、この『奪われた50億円相当の資産』を取り戻すため、『ハードフォーク』が行われることになります。
この『ハードフォーク』は、『奪われた資産』に紐付くアカウントをハッキング前の状態に戻し、元の所有者全員に『イーサリアム』を戻すといいう内容です。同時に、この『ハードフォーク』が成功すれば、『ハッキングを行った犯人』が盗んだ『イーサリアム』は全て無くなることになります。つまり、犯人が持つ『イーサリアム』を綺麗さっぱり消失させ、かつ被害者にはお金が返ってくるという夢のような内容が、イーサリアムにおける『ハードフォーク』というものでした。
しかし、この夢のようなハードフォークの実行は以前から議論されており、多くの人々がイーサリアムの失敗に繋がると考えてました。というのも、『完全な独立組織(DAO)』であれば、このようなことは本来できるわけがありません。仮にできたとしても、管理者のような存在を認めることとなり、『DAO』自体が否定される結果となります。そのため、多くの議論が専門家の間でなされました。しかし、結果として最終的には、市場参加者の約90%以上の賛同を得て、『ハードフォーク』の実行が決まりました。
その後、2016年7月にハードフォークが実行され、『イーサリアム』と『イーサリアムクラシック』の二つに分裂し、現在に至ります。これの一連の動きが『THE DAO事件』と呼ばれる事件の大まかな内容になります。